NovellによるSLPの実装

次の各セクションでは、Service Location Protocol仕様のNovellによる実装について説明します。


Novellのユーザエージェントとサービスエージェント

Novell Clientには、ユーザエージェントとサービスエージェント用のソフトウェアが含まれます。このソフトウェアは、IPプロトコルオプションのいずれかが選択されていれば、クライアントのインストール時に自動的にインストールされます。

クライアントが機能するためには、SLPが有効となっている必要があります。また、クライアントは、他のサービス名解決方法(eDirectory、SAPなど)を使用する前に、SLPを使用することを推奨します。SLPを使用してい場合は、ほとんどのSLP環境設定パラメータの変更がワークステーションやユーザエージェントに機能上の効果を与えることはできません。

パラメータを設定するには、[Novell Client設定]プロパティページにアクセスします([Network Neighborhood]を右クリックし、[プロパティ]>[サービス]>[Novell Client for Windows NT]>[プロパティ]の順にクリックします)。


SLP環境設定パラメータ


[Service Location]タブ

Novell Client for Windows NTの[Service Location]タブにあるオプションについて説明します。

スコープリスト: ユーザエージェントが対象とするSLPスコープが定義されます。このリストにより、ユーザエージェントがSLPサービスクエリのために、どのディレクトリエージェントおよびサービスエージェントが通信相手となるか制御されます。

ユーザエージェントに指定されたスコープにサービスエージェントやディレクトリエージェントが存在していない場合、ユーザエージェントは要求を送信しません。また、サービスエージェントやディレクトリエージェントからの応答を受け付けません。スコープが指定されていない場合、すなわちユーザエージェントがスコープがないというスコープを対象としている場合は例外です。

スコープエントリは、優先順位を付けて設定できます。この設定には上向き矢印と下向き矢印を使用します。スコープのソースは、スタティック、ダイナミック、DHCPの3種類があります。他のSLP設定の場合と同様に、サービスを検索する場合にはスタティックスコープの優先度はDHCPスコープよりも高く、DHCPスコープの優先度はダイナミックスコープよりも高くなっています。


表 112. スコープリストの値

デフォルト値

空のリスト

有効な値

どのような入力も受け付けられますが、通信相手のサービスエージェントやディレクトリエージェントで使用されるスコープ名と一致する必要があります。

スタティック: [スタティック]チェックボックスをオンにすると、既知のアクティブディレクトリエージェントから検出されたスコープをクライアントが動的に追加することが禁止されます。アクティブなディレクトリエージェントは、SLPINFOコマンドの実行によりチェックされます。[スタティック]チェックボックスがオフの場合、クライアントが、これまでに認識していなかったスコープを対象としているディレクトリエージェントを検出すると、クライアントはこのスコープをメモリ内のリストに追加します。その結果、クライアントは、このスコープに含まれるSLP サービスに関するクエリを発行できます。


表 113. スタティックの値

デフォルト値

マークなし(オフ)

有効な値

マーク付き/マークなし(オン/オフ)

ディレクトリエージェントリスト: このパラメータは、クライアントの静的な設定により、どのディレクトリエージェントを通信相手にするか制御します。クライアントが認識するディレクトリエージェントを網羅した完全なリストにする必要はありません。クライアントがどのディレクトリエージェントを検出したか、または検出したエージェントのステータスがアクティブかどうかを調べるには、SLPINFOコマンドを/D引数とともに使用します。


表 114. ディレクトリエージェントリストの値

デフォルト値

空のリスト

有効な値

SLPDA.NLMを実行しているNetWareサーバのIPアドレスまたはDNSで解決できるホスト名

スタティック: このチェックボックスをオンにすることにより、ディレクトリエージェントの動的な検出はなくなり、ディレクトリエージェントの検出はスタティックまたはDHCP方式で行われます。


表 115. スタティックの値

デフォルト値

マークなし

有効な値

マーク付き/マークなし(オン/オフ)

アクティブ検出: このチェックボックスをオフにすると、ユーザエージェントはSLP要求のためにディレクトリエージェントに接続することが必要になります(ユーザエージェントからサービスエージェントへのマルチキャスト要求の発行はありません)。スタティックを有効にしてアクティブ検出を無効にすると、ユーザエージェントはマルチキャスト通信がまったくできなくなります。アクティブ検出を一旦無効にすると、ディレクトリエージェントリストに1つ以上のエントリを登録する必要があります(登録がまったくないと、ユーザエージェントからSLPサービスの問い合わせをする方法がありません)。


表 116. アクティブ検出の値

デフォルト値

マーク付き(オン)

有効な値

マーク付き/マークなし(オン/オフ)


詳細設定タブ

Novell Client for Windows NTの[Service Location]タブにあるオプションについて説明します。

サービスエージェントへの要求のタイムアウト時間: サービスエージェントへのSLP要求がタイムアウトになるまでの期間を秒数で指定します。このパラメータは、ディレクトリエージェントへの要求の待機時間には適用されません。これには別のパラメータがあります。


表 117. サービスエージェントへの要求のタイムアウト時間の値

デフォルト値

15

有効な値

1〜60,000秒(16.67時間)

SLPキャッシュ応答保存期間: ユーザエージェントがディレクトリエージェントやサービスエージェントからSLPサービス応答を受け取ると、このパラメータで指定された期間だけ、応答はユーザエージェントのキャッシュまたは記憶領域に保管されます。SLPは要求を受け取ると、ディレクトリエージェントやサービスエージェントに送るネットワークパケットを作成する前に、まずそのキャッシュをチェックします。要求への応答にキャッシュの内容が使用できる場合には、キャッシュの内容で応答します。通常のSLP操作の場合、ここでの設定値は1分を超えないようすることを推奨します。理由を次に示します。


表 118. SLPキャッシュ応答保存期間の値

デフォルト値

1分

有効な値

1〜60分

SLPデフォルト登録ライフタイム: このパラメータは、サービスエージェントがディレクトリエージェントにSLPサービスを登録するとき、このサービスの登録ライフタイムを指定します。Novell Clientには、ユーザエージェントの機能だけでなく、サービスエージェントの機能(サーバと同じ)もあるため、クライアントワークステーションからディレクトリエージェントにSLPサービスを登録できます。ただし、クライアントワークステーションがサービスエージェントとしてSLPサービスを登録することは、一般的ではありません。WINSOCK 2インタフェースを使用してクライアントワークステーションからSLPサービスを登録するアプリケーションを作成できます。クライアントワークステーションからSLPサービスを登録する場合の例です。

SLPサービスの登録ライフタイムに到達すると、サービスの登録先のディレクトリエージェントは、そのデータベースから、このサービスに対応するエントリを削除します。このパラメータは、サービスエージェント(ワークステーションまたはサーバ上)が、サービスを対応するディレクトリエージェントに再登録する時期を決定するためにも使用されます。


表 119. SLPデフォルト登録ライフタイムの値

デフォルト値

10,800秒

有効な値

60〜60,000秒

SLP最大転送ユニット: TCP/IP MTUに等しく、1つのSLPパケットの最大サイズを示します。この設定は、SLPパケットのサイズが通信インフラの容量を超えないように制限を加え、リソースを多用するパケットの断片化と再構成を防止するために使用されます。


表 120. SLP最大転送ユニットの値

デフォルト値

1,400バイト

有効な値

576〜4,096バイト

SLPマルチキャストの範囲: このパラメータは、1つのSLPマルチキャストパケットが通過できるサブネット数(ルータ数プラス1)の最大値を指定します。このパラメータに1を指定すると、マルチキャストパケットは、ルータを超えて外に進むことができません。このパラメータは、UDP/TCPパケットの存続時間(TTL)設定として実装されます。

TTLは次のいずれかの条件で、1がマイナスされます。


表 121. SLPマルチキャストの範囲の値

デフォルト値

32ホップ

有効な値

1〜32ホップ

SLPマルチキャスト通信にブロードキャストを使用: このパラメータを指定すると、通常ならばSLPユーザエージェントがマルチキャストを使用するところで、ブロードキャスト(アドレスのホストID部分のビットがすべてオン)が使用されます。

これはマルチキャストを使用するのと、次の点で異なります。


表 122. SLPマルチキャスト通信にブロードキャストを使用値

デフォルト値

オフ

有効な値

オン/オフ

SLPにDHCPを使用: このパラメータは、SLPユーザエージェントが、SLPスコープ情報とディレクトリエージェント設定情報を検索するため、この情報を提供する可能性のあるDHCPサーバを探すかどうかを指定します。ワークステーションのIPアドレスが静的に設定されている場合であっても、SLPはSLPスコープ情報とディレクトリエージェント設定情報をDHCPサーバから受け取ることができます。SLP情報に対するDHCP要求の送信は、SLPユーザエージェント/サービスエージェント初期化の一環として行われます。SLP情報は、DHCP INFORM要求を使用して要求されます。この要求は、最初のBOOTP要求に続けて送信されます(クライアントがDHCP/BOOTPを経由してIPアドレスを取得するように設定されている場合)。すべてのSLP DHCP応答情報は連結されます。SLPは、各ディレクトリエージェントがサポートしているスコープを決定するため、DHCPにより設定された各ディレクトリエージェントにアクセスします。

DHCPサーバ用のブロードキャストに必要なトラフィック下限を低減するため、SLP情報の管理にDHCPを使用しない計画を立てる方法があります。この計画を実行する管理者は、このパラメータをオフに設定します。


表 123. SLP値にDHCPを使用する

デフォルト値

オン

有効な値

オン/オフ

ディレクトリエージェントへの要求待機時間: ディレクトリエージェントへのSLP要求がタイムアウトになるまでの期間を秒数で指定します。このパラメータは、サービスエージェントへの要求の待機時間には適用されません。これには別のパラメータがあります。


表 124. ディレクトリエージェントへの要求待機時間の値

デフォルト値

5

有効な値

1 - 60,000

受信ディレクトリエージェント上での登録待機時間: ワークステーションで実行されているサービスエージェントがディレクトリエージェントの通知を請求なしに受け取った場合(ディレクトリエージェントが起動したか、ハートビートを発行した場合)、サービスエージェントは、自分が提供するサービスの内容を登録する必要があります。このパラメータは、サービスエージェントがそのサービスを登録する時の時間範囲を指定します。この時間範囲において、ネットワーク上の他のサービスエージェントは同じディレクトリエージェントにサービスを登録することはできません。すでに説明したように、クライアントワークステーションは提供するサービスを通知するために、SLPを使用する必要がある場合があります。この方法は一般的ではありませんが、将来この通知方法を活用したアプリケーションが普及すると状況が変わる可能性があります。


表 125. 受信ディレクトリエージェント上での登録待機時間の値

デフォルト値

2秒

有効な値

1〜60,000秒


Novell Directory Agent

Service Location Protocol (SLP)に準拠したディレクトリエージェントはSLP 1をサポートしています。このバージョンの拡張機能により、ネットワーク管理者はネットワークサービス情報の収集と配布をSLPで容易に実現できるようになりました。


表 126. ディレクトリエージェントの機能

機能 説明 NetWare Windows NT/2000

ディレクトリモードの操作

ディレクトリモードではeDirectoryを使用してSLPサービス情報を格納します。これにより、eDirectoryツリー構造の設定、1ヶ所での管理、およびeDirectory機能を利用したサービス情報の複製という既存eDirectory規格の活用が実現されます。eDirectoryの複製サービスは、ディレクトリエージェント間の通信を可能にします。これはSLPの実装としては固有な機能であり、SLPデータベース情報のグローバル配布を容易にします。eDirectoryレプリカサービスにより、ディレクトリエージェントは、ローカルレプリカからグローバルサービスにアクセスする機能を実現します。

ディレクトリモードでは、ConsoleOneを使用します。

X

X

ローカルモード

スタンドアロン操作SLPディレクトリエージェントはeDirectoryを使用しないで動作します。これにより、操作を必要としてはいるがサービス情報をグローバルに共有する必要のないネットワークセグメントで、ネットワーク管理者はSLPディレクトリエージェントを使用できます(ローカルモードはWindows NTのディレクトリエージェントに限定されています)。

Windows NTまたはWindows 2000が稼動しているコンピュータ上で[SLPディレクトリエージェント]プロパティページを使用します。

詳細については、「ローカルモード用プロパティを管理する」を参照してください。

 

X

プライベートモード

プライベートモードで稼動しているSLPディレクトリエージェントは、そのIPアドレスが設定されているSLP エージェントからのSLPサービス登録および要求だけを受け付けます。プライベートモードのSLPディレクトリエージェントは、その通知をマルチキャストでネットワークに送信することはなく、マルチキャスト要求に応答することもありません。

詳細については、「プライベートモードを設定する」を参照してください。

 

X

プロキシスコープのサポート

SLPディレクトリエージェントは、他のSLPディレクトリエージェントが管轄するスコープのプロキシとして機能できます。したがって、ネットワーク管理者は、ローカルネットワークセグメントからは通常認識できないサービス情報を他のSLPスコープから配布できます。この場合、ネットワークディレクトリサポートを有効にする必要はありません。

詳細については、「プロキシスコープを設定する」を参照してください。

 

X

サービスフィルタ処理のサポート

SLPディレクトリエージェントには、ネットワーク内のSLPエージェント間のサービス情報のやり取りを制御するため、サービスフィルタを設定できます。ネットワークディレクトリに格納されたSLPサービス情報をグローバル配布のために制御するフィルタもあります。これらのフィルタは、サービスを1ヶ所で管理する手段を提供し、SLPを介して利用できます(Windows NT/2000のディレクトリエージェントのみ)。

詳細については、「スコープフィルタを設定する」を参照してください。

X

X


Novell Windows NT Directory Agentを使用する


スコープ

SLPでは、スコープとは、ディレクトリエージェントに登録されたSLPサービスのリストを意味します。


ディレクトリモードでスコープを使用する

ディレクトリモードでは、ディレクトリエージェントが作成されると、このエージェントはSLPスコープユニットコンテナオブジェクトを登録します。このオブジェクトは、SLPサービス情報を実際に格納するコンテナです。各スコープユニットオブジェクトには、該当するスコープに対応するすべてのSLPサービスオブジェクトが格納されています。このコンテナの複製を、同じツリーの他のパーティションまたは連結ツリーに作成できます。

すでに説明したように、スコープユニットにはスコープ名という属性があります。サービスエージェントとユーザエージェントはこのスコープ名を使用することによって、これらエージェントが対象としているスコープを定義します。ネットワーク管理者はSLPスコープを活用することにより、SLPサービスをグループに編成できます。サービスエージェントは、そのサーバ上のサービスをどのグループとして登録するか決定します。デフォルトでは、すべてのSLPサービスは、スコープ対象外スコープとして登録されます。クライアントがディレクトリエージェントにSLP要求を送るとき、ディレクトリエージェントが必要なサービスを検索するために使用するスコープをクライアントは指定できます。クライアントがスコープを指定しなかった場合には、ディレクトリエージェントは、要求されたサービスを検索するために、スコープ対象外のテーブルを探します。

ディレクトリエージェントは複数のスコープを対象にすることができ、サービスエージェントはそのサービスを複数のスコープに登録できます。登録されたサービスは、eDirectoryを介してサイト間で複製できます。


ローカルモードでスコープを使用する

ローカルモードに設定されたスコープの運用は、ディレクトリモードに設定されたスコープの運用と同様ですが、スコープがeDirectoryではなくローカル保管場所に格納されている点が例外です。デフォルトでは、すべてのSLPサービスは、スコープ対象外スコープとして登録されます。少なくとも1つのスコープは設定することを推奨します。

スコープのローカルモード設定の詳細については、「新しいスコープを追加する」を参照してください。


64KB制約問題の処理にスコープを使用する

ディレクトリエージェントがTCP接続を介してクライアントに送信できるデータは、64KB以内です。あるサービス種別の属する情報が64KBを超えると、リストの超過部分が切り落とされます。これは、SLP 1ではSLP応答パケットヘッダの長さフィールドが16ビットしかなく、サービスデータの容量が64KBに制限されているためです。

表 127」に、64KB応答パケットに入れることのできる一般サービス種別を示します。


表 127. 一般サービス種別

サービス 応答バケット当たりのサービス種別数

NDAP.Novell

約1,200(ただし、パーティション名の長さにより異なる)

Bindery.Novell

700〜1,100(ただし、サーバ名の長さにより異なる)

MGW.Novell

約1,200

SapSrv.Novell

540以下


スコープフィルタ処理について

SLPはスコープを使用して、管理、運用、またはサービス種別に関わる条件により論理的にサービスをグループ化します。SLPユーザエージェントおよびサービスエージェントが対象とするスコープを指定することにより、ユーザが参照できるサービス情報を制御できます。ただし、この制御のレベルは大規模なネットワークや複雑なネットワークの環境に対応できるほど細かくありません。サービス情報の収集と配布に関して、より細かい制御を実現するためには、SLPディレクトリエージェント設定および管理ツールの一部として提供されている追加フィルタ処理機能が必要です。

スコープを管理するのに、スコープごとに登録フィルタ、応答フィルタ、およびディレクトリフィルタを設定できます。

登録フィルタ、応答フィルタ、およびディレクトリフィルタは、スコープごとに設定されます。したがって、スコープごとに格納される情報の種別を制御できます。


フィルタ処理

SLPディレクトリエージェントには、ネットワーク内のSLPエージェント間のサービス情報のやり取りを制御するため、サービスフィルタを設定できます。ネットワークディレクトリに格納されたSLPサービス情報をグローバル配布のために制御するフィルタもあります。これらのフィルタは、サービスを1ヶ所で管理する手段を提供し、SLPを介して利用できます(Windows NT/2000のディレクトリエージェントのみ)。


包含フィルタと除外フィルタを使用する

登録フィルタ、応答フィルタ、およびディレクトリフィルタは、包含および除外フィルタディレクティブを使用して指定します。

包含フィルタディレクティブは、指定されたスコープに属するサービス情報を格納または検索するときに、サービス登録メッセージまたはサービス要求が満たす必要がある条件を指定します。

除外フィルタディレクティブは、指定されたスコープについて、サービス登録またはサービス要求の発生を禁止する条件を指定します。

1つのスコープに関連付けられたフィルタは、1つまたは複数の包含および除外フィルタディレクティブから構成されます。サービス登録またはサービス要求が処理されるためには、該当するスコープに設定された1つ以上の包含フィルタディレクティブと一致し、同じスコープに設定された除外フィルタディレクティブのどれとも一致しないようにする必要があります。いずれかの包含ディレクティブが設定されていれば、1つ以上の包含ディレクティブに一致しているサービス登録およびサービス要求だけが処理され、他の登録や要求は拒否されます。包含ディレクティブが設定されていなければ、すべてのサービス登録およびサービス要求が除外フィルタディレクティブに従って処理されます。

包含または除外フィルタディレクティブの条件は、1つ以上のフィルタ演算により指定されます。フィルタ演算を実行することにより、管理者は、サービスの種別、サービスURL、サービス登録のライフタイム、あるいは発信元または要求元ホストのネットワーク内でのアドレスを絞り込むことができます。1つのフィルタディレクティブに複数のフィルタ演算を指定すると、すべてのフィルタ演算の結果がTRUEとなったときにだけ、フィルタディレクティブがTRUEとなります。1つのフィルタディレクティブには、フィルタ演算は1種類につき1つだけ設定できます。

フィルタ条件として発信元または要求元ホストのIPアドレスを使用した場合、IPアドレスはドット10進表記で指定します(137.65.143.195など)。IPアドレスにサブネットマスクを加えることができます。このためには、IPアドレスの後にスラッシュ(/)、その後にサブネットマスクを付けます。サブネットマスクの指定は、ドット10進表記、またはマスクを構成する連続ビットの数の指定によります(たとえば、137.65.143.0/255.255.252.0と137.65.143.0/22は同等です)。サブネットマスクが指定されると、このマスクは、フィルタ演算に指定されたアドレスに適用されるほか、チェック中のホストIPアドレスにも適用されます。この適用後、フィルタによる評価が実行されます。


フィルタ構文

登録フィルタ、応答フィルタ、およびディレクトリフィルタ用のABNF(拡張BN記法) (RFC 2234)は、次のように定義されます。

Registration Filter = 1*(include_directive / exclude_directive)
Response Filter = 1*(include_directive / exclude_directive)
Directory Filter = 1*(include_directive / exclude_directive)
include_directive ="INCLUDE("filter_operation")"
exclude_directive = "EXCLUDE("filter_operation")"
filter_operation = [address_operation] [type_operation] [lifetime_operation]   [url_operation]
address_operation = "(ADDRESS" equality_operator *1( ipv4_number / ipv4_number "/" subnet_mask )")"
lifetime_operation = "(LIFETIME" filter_operator seconds")"
type_operation = "(TYPE" equality_operator [wild] service_type [wild]")"
url_operation = "(URL" equality_operator [wild] service_url [wild]")"
service_url = service:URL as defined by RFC 2609
service_type = abstract-type ":"url_scheme / concrete-type
abstract_type = type_name ["."naming_auth]
concrete_type = protocol ["."naming_auth]
type_name = resname
naming_auth = resname
protocol = resname
url-scheme = resname
wild = "*"
reserved = "(" / ")" / "*" / "\"
escaped = "\" reserved
resname = ALPHA [1*(ALPHA / DIGIT / "+" / "-" )]
ipv4_number = 1*3DIGIT 3("." 1*3DIGIT)
subnet_mask = ipv4_number / 1-32
equality_operator = "==" | "!="
filter_operator = "==" / "!=" / ">" / "<"
seconds = 1-65535


包含および除外フィルタディレクティブの使用例

フィルタ機能の実装に役立つように、包含フィルタディレクティブと除外フィルタディレクティブの設定例を次に示します。

ディレクトリエージェントがローカルモードの場合、登録フィルタ、応答フィルタ、およびディレクトリフィルタはローカルシステムのレジストリに格納され、システムの再起動の後も有効です。

ディレクトリエージェントがディレクトリモードの場合、登録フィルタ、応答フィルタ、およびディレクトリフィルタは、フィルタが対象とするスコープを定義しているスコープユニットディレクトリオブジェクトの一部として格納されます。スコープユニットオブジェクトには、登録フィルタ、応答フィルタ、およびディレクトリフィルタの属性があります。これらの属性は、SYN_CI_STRINGタイプの多値属性です。包含および除外フィルタディレクティブは、登録フィルタ、応答フィルタ、またはディレクトリフィルタの属性内の文字列(他の情報とは区別された)として格納されます。


Service Location Protocolディレクトリエージェントを使用する

次のシナリオでは、SLP導入用の多くのオプションから、いくつかの設定例を示します。


シナリオ1: NetWareとWindows NTが混在している環境のリモートサイト

問題点: NTサーバが稼動し、NetWareクライアントがあるにもかかわらずNetWareサーバは稼動していないリモートオフィスが存在します。管理者は、クライアントからローカルサーバを介してすべてのネットワークサービスを参照でき、しかも、処理の遅いリンクを介してオンデマンドサービスクエリを送信する必要がないようにしたいと考えています。

解決方法: ディレクトリエージェントをWindows NTサーバにインストールすれば、クライアントはローカルサーバを介してすべてのネットワークサービスを参照でき、しかも処理の遅いリンクを介してオンデマンドメッセージを送信する必要はありません。


シナリオ2: リモートオフィスはWindows NTサーバのみ

問題点: NTサーバを運用しているリモートオフィスがあります。管理者は、ローカルクライアントが限定されたサービスだけを参照できるようにしたいと考えています。

解決方法: 新しいディレクトリエージェントとそのフィルタ機能またはプロキシ機能を利用することにより、ディレクトリエージェントを設定し、特定のサービスだけが参照できるようにします。


シナリオ3: 小人数のユーザグループ用のディレクトリエージェント

問題点: 管理者は、ディレクトリエージェントを1つのユーザグループ用に設定し、このディレクトリエージェントで、ネットワーク上のすべてのSLPサービスではなく、限定されたサービスだけを管理したいと考えています。

解決方法: 管理者が、このディレクトリエージェントに登録できるサービスを正確に指定します。さらに、このディレクトリエージェントのアドレスを該当するユーザに静的に割り当てることにより、管理者はユーザが参照できるサービスを制御できます。


シナリオ4: SLP情報の制限

問題点: 管理者は、あるディレクトリエージェントからSLP情報をクエリで参照できるユーザを限定したいと考えています。

解決方法: Windows NT用のディレクトリエージェント上のフィルタを設定し、このディレクトリエージェントから情報を取得できるユーザを指定します。この指定はIPアドレスに基づいて行います。


シナリオ5: WANリンク上でのSLP情報の同期

問題点: 管理者は、WANリンク上でSLPサービス情報を同期し、リンクの片側ではNetWareサーバは使用せずにeDirectoryを使用したいと考えています。

解決方法: Windows NTサーバ上でディレクトリエージェントを稼動させ、ネットワークeDirectory複製設計情報に設定されているeDirectoryスコープコンテナを対象とするようにディレクトリエージェントを設定します。


シナリオ6: SLP情報のリモートサイトでの複製

問題点: 管理者は、SLPサービス情報をリモートサイトで複製し、しかも複製方法としてeDirectoryを使用しないようにしたいと考えています。

解決方法: リモートサイトのWindows NTサーバにディレクトリエージェントをインストールし、他のディレクトリエージェントのスコープの情報のプロキシとなるようにこのディレクトリエージェントを設定します。元のサービス情報を包括しているディレクトリエージェントスコープを、スコープ管理権限と呼びます。リモートサイトのディレクトリエージェントは、スコープ管理権限を参照できるように設定します。ディレクトリエージェントは、リモートサイトに情報を複製できます。この複製には、ディレクトリエージェント宛てに発行される標準的なSLP要求が使用されます。


シナリオ7: ディレクトリエージェントをローカルモードで実行

問題点: 管理者は、プリンタなどのサービスを検索するためネットワーク上でSLPを必要としています。ネットワークでマルチキャストパケットの運用は禁止され、ユニキャストの方が通信容量の利用効率が高いため、管理者は、ディレクトリエージェントによるユニキャスト要求の処理を必要としています。

解決方法: Windows NT用のディレクトリエージェントをローカルモードで操作します(サービスは、ディレクトリサービスではなく、メモリにだけ格納されます)。これは、ディレクトリエージェントはNovell ClientまたはeDirectoryなしに、Windows NTで稼動できること意味します。


シナリオ8: プロキシ機能の使用

問題点: 開発部門の管理者は、サービスが変動していることに気づいています。そこで、デフォルトのサービスライフタイムプロトコルに頼るのではなく、SLPのサービス情報が常に正確であるような、実態に即した方法を求めています。

解決方法: Windows NT用のディレクトリエージェントのプロキシ機能を使用し、他のディレクトリエージェントまたはサービスエージェントのスコープについて問い合わせることができるようにディレクトリエージェントを設定します。ディレクトリエージェントに、サービスエージェントのIPアドレスを設定します。ディレクトリエージェントは、スコープ管理権限の役割を果たします。この結果、ディレクトリエージェントは設定された間隔で各サービスエージェントに対してポーリングを行い、使用可能なサービスについて問い合わせます。