NSSの機能と利点

ここでは、NSSの機能および利点について説明します。


NSSの管理

ConsoleOneTMは、従来のボリュームおよびNSS論理ボリュームの両方を設定および保守するための主要なユーティリティです。「ConsoleOneを使用してNovell Storage Servicesを設定する」を参照してください。

注:  NWCONFIGおよびNSSメニューは、NetWare 6 NSSの一部の機能と互換性がありません。NSSの設定および管理の手順では、すべてConsoleOneを使用します。


単一のストレージプールに論理ボリュームを統合する

NSSはストレージプールを使用します。ストレージプールは、すべてのストレージデバイスから取得された一定の容量の領域です。すべてのNSS論理ボリュームをストレージプール内に配置します。このため、パーティション内に保持するボリューム数を制限する必要はありません。1つのパーティションには1つのストレージプールしか持つことはできませんが、ストレージプールには論理ボリュームを無制限に配置できます。ただし論理ボリュームのサイズは、ストレージプールのサイズを超えることはできません。


論理ボリュームを作成する

NSSストレージプールから作成したボリュームを論理ボリュームと呼びます。論理ボリュームは、特定のサイズに設定されたボリュームか、またはそのプールに割り当てられた物理領域の容量に応じて動的に拡張可能なボリュームのいずれかになります。このため、他にパーティションを作成しなくても、必要なサイズまたは必要な数のファイルを追加し、格納できます。ストレージプール内に使用可能な物理領域がある限り、ストレージプールにはいくつでもボリュームを追加できます。


ストレージプール内のボリュームの上限の超過(オーバーブッキング)

個別の論理ボリュームがストレージプールのサイズを超えることはできません。ただし、ストレージプールには多数のボリュームを作成できます。個別の論理ボリュームはストレージプールよりも小さくなければなりませんが、複数の論理ボリュームの合計はプールのサイズを超過してもかまいません。この機能をオーバーブッキングと呼び、これによってファイルシステムを効率的に管理できます。

たとえばユーザが多数おり、各ユーザにボリュームがいくつか割り当てられていて、それぞれのボリュームの容量には上限が設定されているとします。すべてのユーザがそのボリュームを使い切っていないのであれば、新たにボリュームを割り当てることができます。このとき、割り当てるボリュームの容量の総計がプールのサイズを超過していても問題はありません。基本的に、容量が上限に達していないボリュームがある限り、ユーザはプール内の他のボリュームから空き容量を借りることができます。このため、一部のユーザがボリュームの上限に達したり、上限を超過した場合でも、必ずしもディスク容量を追加する必要はありません。


論理ボリュームおよびストレージプールを非アクティブ/アクティブにする

保守を行うために、ストレージプールやボリュームに対するユーザのアクセスを一時的に禁止しなければならない場合があります。このような場合、サーバを停止する代わりに、個別のストレージプールを非アクティブにして、REBUILDおよびVERIFYユーティリティを実行できます。ストレージプールを非アクティブにすると、ユーザはそのプール内のすべてのボリュームにアクセスできなくなります。REBUILDおよびVERIFYユーティリティは、DOSドライブのルートにログファイルを生成します。


すばやいエラー修正およびデータ回復

NSSはファイルシステムのクラッシュ後、データをすばやく回復します。ボリューム全体をスキャンして破損を調べるのではなく、最新の変更をすばやく再生し、それらが正しく書き込まれたかを確認します。ファイルシステムは変更された情報を回復するか、またはトランザクション開始前の元の設定にデータを戻します。サーバの中断時間が短くなるため、メールサービスなどのアプリケーションにとっては有利です。


即時にデータをディスクに保存する

「即時にファイルをフラッシュ」機能を使用すると、ファイルデータは次のフラッシュサイクルを待つことなく、ファイルを閉じると直ちにディスクに保存されます。これにより、データをフラッシュサイクルの間に失うというリスクをなくすことができます。


以前に保存されたファイルを保持する(スナップショット)

ファイルスナップショット機能を使用すると、バックアップユーティリティによって、すべてのファイルについて整合性のあるコピーを保持できます。この機能では、開いているすべてのファイルのオリジナルコピーが、ファイルシステム上で作成されます。たとえば、ファイルの変更中にバックアップを行ったり、クラッシュが発生すると、バックアップには新旧両方のデータが含まれる可能性があります。スナップショットでは、ファイルを最後に閉じたときのコピーがキャプチャされます。このため、バックアップサイクルの間でデータを失っても、以前に保存されたファイルの完全なコピーが残っていることになります。


トランザクショントラッキングシステム(TTS)

トランザクショントラッキングシステムTMは、システムエラーのため完了しなかったトランザクションを取り消すことにより、データベースアプリケーションを保護します。TTSTMは、すべてが従来のボリュームの場合、またはすべてがNSS論理ボリュームの場合のいずれかで使用できます。両方の種類のボリュームを使用している場合は、すべてのボリュームに対して使用できるわけはありません。従来のボリュームと論理ボリュームの両方を使用しているシステムでは、TTSはデフォルトで従来のボリュームに対してのみ機能します。両方の種類のボリュームを使用しているシステムで、論理ボリュームに対してTTSを使用する必要がある場合は、AUTOEXEC.NCFに「DISABLE TTS」と入力し、TTSを使用する論理ボリュームごとにTTSを有効にする必要があります。従来のボリュームとは異なり、TTSはデフォルトでは論理ボリュームには適用されません。TTSを論理ボリュームで有効にするには、「nss/transaction=volname」と入力します。


変更ファイルリストを確認する

変更ファイルリストは、前回のバックアップ以後に変更が加えられたファイルのリストです。バックアップユーティリティは、ファイルシステム全体を検索する代わりに、このリストにアクセスします。


クラスタリング機能を使用する

ストレージデバイスの中には、SAN (Storage Area Network)に存在するものがあります。これらのデバイスは、クラスタ内にある複数のサーバによって共有されます。クラスタ化の詳細については、『Novell Cluster Services Overview and Installation』を参照してください。


ファイル圧縮を有効にする

NSSはファイル圧縮をサポートしています。これによりボリューム内のファイルを圧縮して、空き容量を増やすことができます。ファイル圧縮を有効にした場合、この機能を無効にするには、ボリュームを再作成する必要があります。


削除されたファイルへのアクセスを禁止する(データシュレッド)

データシュレッド機能を使用すると、パージされたディスクブロックが16進数のランダムなパターンで上書きされます。これにより、許可されていないユーザがディスクエディタを使用してパージされたファイルにアクセスするのを防ぎます。削除されたデータには、最大7つのデータシュレッドのパターンを上書きできます。


ユーザスペース制限を設定する

ユーザスペース制限を使用すると、ユーザがボリューム上に持つことのできる容量を制限できます。この機能は、学校の生徒などの、多数のユーザを扱うシステムで便利です。ボリュームを作成するときに、ConsoleOneでユーザスペース制限オプションを選択できます。


ディレクトリスペース制限を設定する

ディレクトリスペース制限を使用すると、ユーザがディレクトリまたはサブディレクトリ内に持つことのできる容量を制限できます。


読み込み専用の論理ボリュームとしてCD-ROMを使用する

NSSは、ISO9660およびMacintosh* HFSフォーマットのCD-ROMをフルサポートしています。


ボリュームのマウントに追加メモリが不要である

従来のNetWareファイルシステムを使用してボリュームをマウントするとき、NetWareはマウント処理時にすべてのファイルおよびディレクトリをスキャンします。その後、すばやくアクセスできるように、すべてのファイルをメモリにロードします。ファイルの数やサイズが増えると、必要なパフォーマンスレベルを維持するために追加のメモリが必要になります。

NSSはマウント処理の際にファイルシステム全体をスキャンしないため、ボリュームをマウントするのに大容量のメモリを必要としません。マウントが完了しても、ユーザがファイルへアクセスするまでNSSはファイルをメモリにロードしません。したがって、ファイルを追加したり、ボリュームをマウントするときに、追加のメモリは必要ありません。


信頼性の低いブロックのデータをリダイレクトする(ホットフィックス)

ファイルシステムがディスクに対してデータの読み書きを継続して行うと、ディスクストレージブロックの一部で、データを格納する機能の信頼性が低下する場合があります。NSSはホットフィックスを使用して、信頼性の低いブロックにデータが書き込まれないようにします。

ホットフィックスTMは、メモリに残っているオリジナルのデータのブロックを、データが正しく保存できるパーティションのホットフィックス再配置領域にリダイレクトします。データのブロックをリダイレクトする場合、オペレーティングシステムは障害が発生したブロックのアドレスを記録します。サーバはそれ以後、そのブロックにデータを格納しなくなります。

パーティションを作成するときにホットフィックスを有効にしなかった場合、ホットフィックスオブジェクトは作成されず、データのリダイレクトは行われません。ホットフィックスは、パーティションの作成時に設定する必要があります。後でホットフィックスを追加するには、そのパーティションからボリュームを削除し、ホットフィックスを追加して、バックアップからボリュームを復元する必要があります。

ホットフィックス機能は、パーティションのミラーリングと統合されています。ホットフィックスを選択するときに、そのパーティションのミラーリングも有効にできます。

ホットフィックスのリダイレクトは、書き込みリクエスト、読み込みリクエスト、またはリードアフタライト検査時に行われます。データのリダイレクトが行われる条件は、次のとおりです。

デフォルトでは、ディスク容量の2%がホットフィックス再配置領域として設定されます。この容量は変更できます。

ホットフィックスを有効にすると、ディスク障害が発生したり、再配置領域に空きがなくならない限り、ホットフィックスは常にアクティブになっています。[Storage Devices]を選択してからホットフィックスパーティションを選択すると、ホットフィックスの動作を、MONITORで表示できます。MONITORの使用方法については、『Utilities Reference』の「MONITOR」を参照してください。

ディスクパーティションを作成するときに、ホットフィックス再配置領域を指定しないこともできます。ホットフィックス再配置領域を指定しないことにより、パーティション領域を節約できます。これは、耐障害性の機能を提供する大規模なRAIDシステムでは便利です。

重要:  ホットフィックスを有効にしていない場合、パーティションではNetWareによる耐障害性を使用できなくなります。ディスクの破損セクタにあるデータは、ホットフィックス再配置領域にリダイレクトされません。また、ホットフィックスを使用していないパーティションはミラーリングできません。ホットフィックスは、パーティションの作成時に有効にするのが最も簡単な方法です。後でホットフィックスを追加するには、そのパーティションからすべてのボリュームを削除する必要があります。


個別のボリュームではなくストレージプールを修復する

従来のボリュームを修復するには、VREPAIRを使用します。VREPAIRの使用方法については、VREPAIRの『Utilities Reference』を参照してください。論理ボリュームについては、その論理ボリュームが含まれるストレージプールでVERIFYおよびREBUILDという修復ユーティリティを使用します。論理ボリュームの再構築方法については、「NSSストレージプールおよびボリュームの再構築」を参照してください。

VERIFYは、データブロックの不整合やその他のエラーを検索することにより、NSSプールでのファイルシステムの完全性を検査します。このユーティリティにより、ファイルシステムの問題の有無が明確になります。

REBUILDはオブジェクトツリーの既存のリーフを検証および使用して、システム内のその他のすべてのツリーを再構築します。再構築中のボリュームにユーザがアクセスできないようにするため、REBUILDを実行する前にプール(およびそのプール内のすべてのボリューム)を非アクティブにする必要があります。ストレージプールを非アクティブにすると、プール内のすべてのボリュームは自動的に非アクティブになります。

これらのユーティリティはVREPAIRと同じものではありません。REBUILDは、データの破損後にファイルシステムを回復するための最終的な手段としてのみ使用します。REBUILDおよびVERIFYを使用すると、DOSドライブのルートにログファイルが生成されます。


パーティションをミラーリングする

パーティションをミラーリングすることにより、データを保護できます。ミラーリングでは、同一のデータが、同じコントローラチャネルを使用している他のディスクに格納されます。ConsoleOneを使用して、従来のパーティションとNSSパーティションの両方をミラーリングできます。

パーティションをミラーリングするための要件は、次のとおりです。


ストレージデバイス間でデータをストライプする(RAID)

NSSを使用すると、システム上の複数のディスクドライブ間でデータをストライプすることにより、追加のストレージデバイスを作成できます。このオプションをRAIDと呼びますが、実際には、これはハードウェアRAID 0システムをエミュレートするソフトウェア設定です。つまりこのRAID設定は、RAIDマシンを使用するのではなく、ソフトウェアレベルでRAIDの機能を実現します。

RAIDデバイスは、すべての物理ストレージデバイスから空き容量を取得し、結合した領域にセグメントを配置することより設定されます。RAIDセグメントは、それぞれのストレージデバイスから取得された領域を合計した容量になります。1つのRAIDデバイスは最大8つのセグメントを持つことができます。ファイルシステムは、RAIDディスク上にデータをシーケンシャルに配置します。これをディスクストライプと呼びます。RAIDのストライプのサイズは、ファイルシステムが次のディスクに切り替えるまでにディスク上に配置するデータの容量を表します。

ソフトウェアRAID 0は、論理ボリュームおよび従来のボリュームの両方で使用できます。

NSS RAIDに関する重要な情報


NSSで現在サポートされていない機能

次の機能は従来のNetWareファイルシステムでは使用できますが、現在NSSではサポートされていません。


NSSアーキテクチャ

NSSでは、ストレージプール、論理ボリューム、従来のボリューム、およびリモートデバイスを使用して、ファイルシステムを保守できます。論理ボリュームは、NSSパーティション領域のストレージプールに格納されます。従来のボリュームは従来のボリューム用にパーティション化された領域に直接格納されます。次の図は、使用可能なファイルシステムオプションに基づいたNSS設定を示しています。

図: 1
Novell Storage Servicesの設定



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